従業員を解雇するのは難しい。

普通の経営者の方は、30日前に予告すれば従業員はいつでも辞めさせることができる(解雇することができる)と思っている方が多いようです。

 

これは、労働基準法に、使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならないと書いてあることから、これを守れば、自由に解雇できると考えられているためです。ちなみに、民法にも、期間の定めのない雇用契約はいつでも解約の申し入れをすることができるという規定があります。

 

しかし、実際は、過去の判例により、解雇に合理的理由がなければ解雇は無効とされています。これを「解雇権濫用の法理」と言います。

 

平成20年に施行された労働契約法には、この解雇権濫用の法理を受けて、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と規定されています。

 

したがって、雇い主が従業員を解雇するには、この客観的に合理的な理由が必要なこととなります。

 

経営が苦しい、あるいは経営状況を改善するための解雇は、「整理解雇」と言います。この整理解雇は、ただ、経営が苦しい、あるいは経営状況を改善するためだけでは、裁判では、無効とされてしまう可能性があります。

 

具体的には、経営が苦しい、あるいは経営状況を改善するためといった解雇の必要性の他に、解雇回避の努力、人選の合理性、手続の妥当性といった要件を満たす必要があります。

 

経営が苦しいという場合、給料引き下げでは対応できないのか、解雇せずに配置転換することで対応できないのかなど解雇しなくても済むような方法を検討して、その方法ではだめだという合理的な理由がなければなりません。

 

また、解雇の対象となる人が一定の基準で公平に選ばれなければなりません。仕事はできるけれども経営者が気に入らないからという理由では解雇は無効となってしまいます。

 

以上のように、経営が苦しいからという理由でも、なかなか従業員を解雇するのは難しいのです。

 

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