取締役の責任 ―お金の管理―

このブログを読んでくださる依頼者の中には、経営者の方もいるのではないでしょうか。経営者の皆様にお役にたてるコンテンツになっておりますので、ぜひご一読頂けますと幸いです。

 

今回の記事は、「取締役のお金の管理に関する責任」について紹介します。

 

ー 今回のご相談内容 ー

私は、無線通信に関する新しい技術を開発しました。
この技術を実用化するために新株を発行して増資をしたところ、数億円も出資してもらうことに成功しました。
私は技術屋なので、お金の管理についてよくわかりません。
どのようにしたらよいのでしょうか。

 

「教えて!高島先生!」

当事務所代表弁護士高島秀行がお答えします。


最近は、ITバブル、ベンチャーブームが過ぎ去ったとは言え、画期的な新技術を持つ会社に対しては、積極的に投資を行う投資家やベンチャーキャピタルが増えてきています。

 

しかし、この投資された出資金は、新株を発行し、株主から集めたお金であることを肝に銘じてください。

 

会社は株主のものですから、他人から出資してもらったということは、会社はもはやあなただけのものではなくなったのです。

 

あなたは、代表取締役でしょうが、増資により集めたお金を株主から預かっている立場なのです。

 

利息や元本は定期的に返還する必要はありませんが、会社の価値を高めたり、配当を可能にしたりしなければなりません。

 

このことを前提に、お金の管理を考えなければなりません。

 

まず、代表取締役であっても、増資で集めたお金を自分の好きなように使うことはできません。

 

通常、増資で大金が入ってくると、自社ビルを持つことや、外国産の高級車を持つことを考えますが、これは誤りです。

 

出資金は会社引いては株主のものなのですから、支出が会社の利益になるかという観点から使途を定めなければなりません。

公私混同は絶対に避ける必要があります。

 

例えば、あなたの友人の会社が借金で困っている場合、返してもらえないかもしれないという状況で、お金を貸してしまったら、あなたの行為は、会社に対する背任罪(刑法247条)となります。

 

次に、お金を出す場合には、必ず契約書を交わしましょう。

 

契約は、相手方が誰で、いつまでに、どうなるのか、思ったとおりにならなかった場合はどうなるか、などを定めるものですから、契約内容を考えることは、その支出がどういう意味を持つのか考えることともなります。

 

また何よりも、株主に対し、この支出はどういう内容だと説明ができることとなります。

株主に説明できない不合理な支出は株主代表訴訟によって返還を求められることにもなります。

 

したがって、お金がたくさん集まったからといって、曖昧なままお金を支出することは許されないのです。

 

最後に、お金の管理を任せられる人材を探すことが必要です。

 

これが一番難しく、仮に、任せられる人材を探したとしても、お金の収支については、経営者であるあなたがチェックできる仕組みにしておかないと数億円のお金があっという間にどこかに消えてしまうということになりかねません。 


高島法律事務所では、契約書の分野において多数の解決事例をもっています。

まずは、「相談」という形で、第一歩を踏み出し、お手伝いをさせてください。経営者である依頼者の力になれるよう邁進いたします。


 

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