売掛金の回収方法(債権保全策)―仮処分―

今回お届けするのは、前回に引き続き、「債権回収」「売掛金回収」に関する相談です。

(→前回の記事「少額訴訟制度を解説!弁護士に依頼したら赤字になるのでは!?と悩む経営者の皆様へ」
(→前々回の記事「売掛金回収の強い味方!内容証明郵便よりも強力な制度を紹介します!」
(→前前前回の記事「意外に早い「売掛金の消滅時効」に注意しましょう」

 

このブログを呼んでくださる依頼者には、売掛金の回収でお悩みになっている経営者の皆様も多いのではないでしょうか。そんな皆様にお役にたてるコンテンツになっておりますので、ぜひご一読頂けますと幸いです。

今回は、「売掛金の回収方法(債権保全策)―仮処分―」というテーマでお届けさせていただきます。
 

ー 今回のご相談内容(前回と同様)ー

私はIT企業を経営しています。お客様にWebサイトや社内システムを納品する仕事です。そんな中、あるクライアント様が納品したにも関わらず、代金を支払いません。取引先が、商品の代金を「払う。払う。」と言いながらなかなか支払ってくれません。売掛金回収のための、何か良い手段はないでしょうか。

 

 

「教えて!高島先生!」

当事務所代表弁護士高島秀行がお答えします。


 

売掛金をなかなか払ってくれない取引先があります。しかし、その取引先が仕事を請けている先はわかります。

何とか回収できるでしょうか?

 

売掛金をなかなか払ってくれないという相談は、意外と多いです。

通常であれば、交渉して話し合いがつかなければ訴訟を起こして、訴訟中にも和解ができなければ、判決を取って、相手方の財産を差し押さえるということとなります。

 

例えば、質問のように取引先がわかっている場合は、そこに対する売掛金を差し押さえることとなります。

 

ただ、訴訟の開始前には、取引があったけれども、判決を取って、差押えをするときには、その取引先とは取引がなくなってしまうかもしれません。

 

差押えを恐れて、他の会社の名義で仕事を受注することも考えられます。

 

そのような財産隠しを防ぐ方法があります。これを「仮差押」と言います。

 

仮差押は、正式な裁判をしないで、こちらの一方的な言い分を聞いて、仮に差し押さえることを認めてくれる手続です。

 

仮差押があると、差押があったときのように、相手方の取引先は、相手方に売掛代金を支払うことができません

 

したがって、仮差押をしてしまえば、後で正式な裁判で勝ったときに、正式な差押えをすることが可能となります

 

このように、債権者にとって有利な仮差押ですが、売買契約書や発注書、支払を待って欲しいという支払の猶予を求める文書などの、相手が支払うことを認めた文書が証拠として必要となります。

 

また、相手方の反論を聞かずに、仮差押を認めることとなるので、もし、間違いであると相手方に損害を与えることにもなりかねません

 

そこで、仮差押をするには、請求金額の2割から3割の担保を積まなければなりません

500万円の売掛金であれば、100万円から150万円の担保を法務局に積む必要があります。

これは、正式裁判で勝てば戻ってくるお金です。

 

しかし、裁判で勝つまでの間、その資金は寝かせておくこととなりますから、資金繰りに余裕がないと仮差押はできません。

 

仮差押は、有効な債権保全の手段ですが、契約書など相手が署名捺印した文書と担保としてお金が必要だということを覚えておいてください。

 


高島法律事務所では、売掛金・債権回収の分野において多数の解決事例をもっています。

また、代表の高島秀行は、債権回収会社で取締役を務めています。売掛金が回収できない状態が続くことはとても悩ましいですよね。

まずは、「相談」という形で、第一歩を踏み出し、解決までのお手伝いをさせてください。経営者である依頼者が、本業にいち早く集中できるよう共に解決に邁進いたします。


関連記事

  1. 会社分割すると従業員はどうなる?
  2. 取引で契約書を交わさない場合のリスク
  3. 取締役の責任 ―安易な賛成に注意!―
  4. 財産隠しは犯罪
  5. 意外に早い「売掛金の消滅時効」に注意しましょう。
  6. IPO|上場することのメリットとは?
  7. 共同経営していたが取締役辞任を迫られた
  8. 3社以上の契約を結ぶ際に重要なこと
PAGE TOP